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露地キャベツ農家
秋田県横手市・借りた畑200アール/新規参入1名+収穫期の臨時雇用/夏秋どり1作
机上版一次産業・土地利用型・相場連動型無店舗BtoB許認可あり
調査日 2026-08-05 / 原典を確認した日 2026-08-07

現地には行っていません。公開されている情報と、そこから組んだ試算だけで書いています。実額の裏取りが済んだら検証版として更新します。
初期投資
475万円
月の営業利益(標準)
▲143,666円
弱気 ▲201,266円 / 強気 ▲86,066円
経営者の時給(標準)
▲1,598円
月 90時間
投資の回収(標準)
回収に届かない
個人事業としての点数
32 / 100
自分の資金と時間で始めて、自分が回す商売として
事業としての点数
24 / 100
人と仕組みで、本人から離れて大きくなるか
この商売はどういうものか
雪の多い地方で、春に畑を借りて苗を植え、夏から秋にかけてキャベツを収穫して出荷する商売です。売り先はおもに卸売市場で、値段は市場が決めます。作った量に、その日の値段を掛けたものが売上になります。畑はお金があっても手に入るとは限らず、借りるにも農業委員会の許可が要ります。
この試算で見ている形
- 規模:借りた畑200アール。
- 体制:経営者1名が主に作業し、収穫と調製の時期に臨時雇用を入れる。
- 地域・立地:秋田県横手市。
- 営業の形:夏秋どり1作。露地キャベツ200アール(2.0ヘクタール)を賃借し、5月から6月に定植、8月から10月に収穫する。農地は所有せず借りる(農地法第3条の許可、または農地中間管理機構経由)。認定新規就農者として経営開始資金の対象になりうる49歳以下を想定。
- 売り先:出荷はJAの共販と卸売市場を前提とする。
- 売上の作り方:作付面積(10アール単位)と10アール当たり収量と出荷率と卸売価格を掛け合わせた額が年間の販売金額になります。
想定した人と、その一年
こういう姿を置きました。就農の時点で49歳以下、農家の生まれではなく、研修を受けてから横手市に入る人。畑は買えないので借ります。市の農業委員会に申請を出し、許可の下りた2ヘクタールを、一枚の大きな畑ではなく何枚かに分けて預かることになります。冬のあいだは動けません。横手の降雪の深さ合計は年平年値で793センチ、そのうち770センチが12月から3月に集まります。雪が消えてから、5月から6月に苗を植え、夏のあいだは管理と防除に回り、8月から10月に穫って出す。人を頼むのは収穫と調製の時期だけです。年間の労働時間は1,633時間を見込み、そのうち554時間が雇った人の分、1,079時間が自分の分。ならせば月90時間ですが、実際は半年に寄ります。夏に張りつき、冬は仕事がない。そして売る機会は年に1度、8月から10月の3か月に集中します。この1回の出来高で、その年が決まります。8月の平均気温は24.7℃、日最高気温の平年値は30.0℃。高冷地の産地よりは暑い場所です。それが玉の出来にどう効くのかは、公開情報からは確かめられませんでした。植え付けがそろわなかった年も、玉が小さかった年も、翌月に取り返す機会はありません。以上は試算のために置いた姿であって、実在の誰かの一年ではありません。
結論
まず、この試算が何の上に乗っているかを置いておきます。
穫れる量は、秋田県で夏秋に穫っているキャベツの平均にしました。夏秋どりというのは、夏から秋にかけて穫る作型のことです。10アール当たり2,400キログラム。借りた畑は200アール(2ヘクタール)なので、年に48トン穫れる計算になります。穫った量のうち実際に市場へ出す割合を出荷率といいます。これを9割とすると、売り物になるのは43.2トン。令和3年産の県の統計に載っている実数を、そのまま置きました。
売る値段は、1キログラム93円にしました。中央卸売市場のキャベツの、8月から10月の値段を直近4年ならしたものです。秋田で穫れるのがこの3か月なので、この時期の値段しか使えません。
この量のままだと、赤字になります。
理由は値段ではなく、量のほうにあります。値段は安い年から高い年まで振ってみましたが、3つとも赤字でした。1キログラム市場に出すのに132.9円かかっていて、売れるのは93円だからです。作りはじめる前に、1キログラムにつき39.9円足りないことが決まっています。
では、どこまで穫れれば足りるのか。
| 10アール当たり収量 | 秋田県のいまの何倍 | この試算での結果 |
|---|---|---|
| 2,400kg(秋田県の夏秋・令和3年産) | 1.00倍 | 月143,666円の赤字 |
| 2,471kg | 1.03倍 | 損益ゼロ(制度からの入金を入れた場合。3年間だけ) |
| 4,047kg | 1.69倍 | 損益ゼロ |
| 4,820kg(全国の夏秋の平均・令和6年産) | 2.01倍 | 年809,353円の黒字。経営者時給750円 |
| 5,110kg | 2.13倍 | 経営者時給が秋田県の最低賃金1,031円に届く |
全国の夏秋と同じだけ穫って、経営者の時給が750円です。秋田県の最低賃金は1,031円。届きません。
表の2行目にある制度からの入金は、新しく農業を始める人に出る経営開始資金のことです。月13.75万円、年165万円が、最長3年。これが入ると標準ケースの月の営業利益はマイナス143,666円からマイナス6,166円になり、ほぼ損益ゼロまで来ます。ただし3年で合計495万円。この試算の初期投資4,751,881円と、ほぼ同じ額です。
なお、作付面積200アールという設定にも、機械の金額4,751,881円にも、直接の出典はありません。
で、この商売はどういうものか
この試算が置いた形では、勧めません。
標準ケースの経営者時給はマイナス1,598円。始めるのに要るのは7,454,838円。投じた額は、この試算では回収に届きません。
これは「畑を借りて、キャベツだけで生活費を稼ぐ」という形についての判定である。すでに田んぼを持っていて空いている畑がある、機械がある、地域に顔が利く。その状態から足すなら、地代も機械の代金も新たにはかからず、別の計算になる。この試算は、そこを見ていない。逆に言えば、単体で立ち上げる商売ではなく、すでにある土台に足す商売だ、というのがこの試算から言えることである。

ここが面白い
主産地でない、ということの意味
キャベツの値段は自分の畑では決まりません。全国の需給で決まります。ここまでは誰でも分かる。分かりにくいのはその先で、主産地の農家は、相場に売値を握られている代わりに天然の保険を持っています。天候が荒れて全国の量が減れば、自分の収量も減る。ただし値が上がる。減った量を、上がった値が埋めてくれるのです。実際、全国のキャベツの卸売数量は令和3年の1,256,973トンから令和6年の1,050,226トンへ16.4%減りましたが、同じ期間に卸売価額は926億円から1,247億円へ34.7%増えています。量が減った年のほうが、市場に落ちた金は多い。
秋田県には、この保険がかかっていません。令和3年産のキャベツの作付面積は、秋田県が324ヘクタール、全国が34,300ヘクタール。全国の作柄を動かす側にいないので、秋田が不作でも値は動かず、全国が豊作なら秋田も一緒に安く売ることになります。量と値が逆に動いて相殺し合う関係が、ここでは切れている。「豊作貧乏」は市場全体の話としては正しいのですが、主産地の外にいる1軒には、貧乏だけが来る年があります。
そして制度の側も、まったく同じ線で引かれています。価格が下がったときに差額を埋める補給金は、指定産地の区域内で生産される指定野菜に限られる。指定産地の外で作ったものは、登録出荷団体や登録生産者が出荷する野菜であっても対象にならないと、農畜産業振興機構が明記しています。制度は人ではなく産地に付いている。共販に入っても、規格をまじめに守っても、区域の外なら届きません。ここでいう共販は、JAがまとめて集めてまとめて売る仕組みのことで、値段を1軒ごとに決めることはありません。秋田県の野菜指定産地は12ありますが、キャベツはひとつもありません。天然の保険も、制度の保険も外れた場所で、全国相場の値段で売る。それがこの商売の立ち位置です。
費用の一番大きい項目は、肥料でも農薬でもない
運賃と手数料です。農業経営統計調査の露地キャベツ作単一経営では、農業経営費31,240千円のうち荷造運賃手数料が8,342千円で26.7%。この試算でも1キログラム25.65円、年1,107,946円、売上の27.6%になります。運ぶ費用は重さで決まり、値段では決まりません。だから相場が下がった年ほど、売上に占める割合が上がっていきます。
農地に入る壁は、下がったのではなく入れ替わった
かつては、取得後の農地面積が一定に満たないと許可されない下限面積要件がありました。これは廃止されています。農林水産省は許可基準を並べた表のなかで、その欄にだけ「廃止」と記しています。代わりに入ったのが、地域計画の実現に支障を生ずるおそれがある権利取得は許可できない、という判断。面積の条件が消えて、地域が描いた絵に合うかという条件が入りました。
数字で見る
初期費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 農業用機械・設備一式(トラクター・管理機・防除機・移植機・車両・育苗資材ほか) | 4,751,881円(推定) |
| 農地の取得費(賃借のため) | 0円 |
| 合計 | 4,751,881円 |
| 運転資金(別枠) | 2,702,957円(推定) |
| 所要資金 | 7,454,838円 |
初期投資の金額に直接の出典はありません。統計の10アール当たり減価償却費33,942円に200アール分を掛けた678,840円を、農業用設備の法定耐用年数7年で割り戻した推定です。

産地と相場の実数
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 秋田県のキャベツ(令和3年産) | 作付面積324ヘクタール/10アール当たり収量2,510キログラム/収穫量8,130トン/出荷量5,070トン |
| うち夏秋(令和3年産) | 作付面積235ヘクタール/10アール当たり収量2,400キログラム/収穫量5,640トン/出荷量3,060トン |
| 全国の夏秋(令和3年産) | 10アール当たり収量4,920キログラム(秋田県はその49%) |
| 全国の夏秋(令和6年産) | 作付面積9,670ヘクタール/10アール当たり収量4,820キログラム/出荷量423,900トン |
| 令和6年産の秋田県 | 「…」(この統計に数値が載っていない) |
| 全国の用途別出荷量(令和6年産) | 生食向947,900トン/加工向162,700トン/業務用向66,400トン |
| 卸売価格の年推移(全国・円/kg) | 令和元年79/令和2年94/令和3年74/令和4年84/令和5年91/令和6年119/令和7年108 |
| 卸売数量の推移(全国) | 令和3年1,256,973トン → 令和6年1,050,226トン(−16.4%) |
| 卸売価額の推移(全国) | 令和3年926億円 → 令和6年1,247億円(+34.7%) |
| 令和7年の月別卸売価格(中央卸売市場・円/kg) | 1月232/2月202/3月167/4月114/5月76/6月77/7月85/8月87/9月93/10月93/11月95/12月86 |
| 秋田県の野菜指定産地(令和8年5月8日) | 12産地(夏秋きゅうり4・夏秋トマト4・秋冬ねぎ3・ほうれんそう1)。キャベツはゼロ |
| 横手市の畑の賃借料(令和7年) | 10アール当たり平均9,916円(筆数210。田は11,871円・筆数6,411) |
| 秋田県の耕地に占める畑(令和3年) | 17,900ヘクタール/146,400ヘクタール=12.2% |
| 横手の降雪の深さ合計・最深積雪の平年値 | 793センチ・119センチ(12月から3月に770センチ) |
| 秋田県の最低賃金 | 1,031円(令和8年3月31日から) |
売上の作り
年間の販売金額 = 作付面積(10アール単位)× 10アール当たり収量 × 出荷率 × 卸売価格。標準ケースは 20 × 2,400キログラム × 90% × 93円 = 4,017,600円。月ならしで334,800円です。
年間の出荷量は43,200キログラム(43.2トン)。年間の経営費は5,741,587円なので、出荷量1キログラム当たりの経営費は132.9円になります。
金額は年額で組み、ほかの回と並べられるように12で割った月ならしでも示しています。実際の入金は8月から10月に集まります。
3ケース〔試算〕
3つのケースは卸売価格の振れで組みました。中央卸売市場のキャベツの8月から10月の卸売数量と卸売価額から、令和4年から令和7年の各年を数量で加重平均した値です。
| 弱気 | 標準 | 強気 | |
|---|---|---|---|
| 卸売価格 | 77円/kg(令和4年) | 93円/kg(4年平均) | 109円/kg(令和6年) |
| 売上高(月ならし) | 277,200円 | 334,800円 | 392,400円 |
| 年商 | 333万円 | 402万円 | 471万円 |
| 変動費 | 312,998円 | 312,998円 | 312,998円 |
| 固定費 | 165,468円 | 165,468円 | 165,468円 |
| 販売促進費 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 月間営業利益 | −201,266円 | −143,666円 | −86,066円 |
| 営業利益率 | −72.6% | −42.9% | −21.9% |
| 作業時間(経営者・月ならし) | 90時間 | 90時間 | 90時間 |
| 経営者時給 | −2,238円 | −1,598円 | −957円 |
| 投資回収月数 | 回収に届かない | 回収に届かない | 回収に届かない |

制度からの入金を入れた場合/入れない場合〔試算〕
経営開始資金は月13.75万円(年165万円)を最長3年。売上とは分けて示します。
| 弱気 | 標準 | 強気 | |
|---|---|---|---|
| 月間営業利益(入れない) | −201,266円 | −143,666円 | −86,066円 |
| 月間営業利益(入れる) | −63,766円 | −6,166円 | +51,434円 |
| 経営者時給(入れない) | −2,238円 | −1,598円 | −957円 |
| 経営者時給(入れる) | −709円 | −69円 | +572円 |
3年で合計495万円。この試算の初期投資4,751,881円とほぼ同じ額です。4年目からは、入れない側の数字だけが残ります。
収量を動かした場合〔試算〕
| 10アール当たり収量 | 年間の営業利益 | 経営者時給 |
|---|---|---|
| 2,400kg(秋田県・令和3年産の夏秋) | −1,723,987円 | −1,598円 |
| 3,960kg(全国のキャベツ計・令和6年産) | −90,925円 | −84円 |
| 4,330kg(全国のキャベツ計・令和3年産) | +296,404円 | +275円 |
| 4,820kg(全国の夏秋・令和6年産) | +809,353円 | +750円 |
卸売価格は93円に固定しています。
どこまで行けば黒字か〔試算〕
| 基準 | 卸売価格 | 月商換算 | 標準ケース比 |
|---|---|---|---|
| 営業利益ゼロ(制度からの入金なし) | 132.9円/kg | 478,466円 | 142.9% |
| 営業利益ゼロ(経営開始資金165万円を入れる) | 94.7円/kg | 340,966円 | 101.8% |
| 経営者時給が秋田県最低賃金1,031円に届く | 158.7円/kg | 571,209円 | 170.6% |
| 年間の営業利益300万円 | 202.4円/kg | 728,466円 | 217.6% |
収量で解くと、卸売価格93円のまま営業利益がゼロになる10アール当たり収量は4,047キログラム。制度からの入金を入れれば2,471キログラム。経営者時給が1,031円に届くには5,110キログラムが要る計算です。
面積では解けません。この試算は費用をすべて面積か出荷量に比例させているので、面積を変えても10アール当たりの損益は動きません。200アールを819アールに広げると、営業利益は年1,723,987円の赤字から7,058,865円の赤字になり、経営者時給はマイナス1,598円のまま変わらない計算になります。

何が一番効くか〔試算〕
| 変数 | 動かす幅 | 月の営業利益への影響 |
|---|---|---|
| 10アール当たり収量(全国の夏秋並み) | 2,400kg→4,820kg | +211,112円 |
| 制度からの入金(経営開始資金) | 入れない→入れる | +137,500円 |
| 作付面積 | +50%(200a→300a) | −71,833円 |
| 卸売価格 | +10%(93→102.3円/kg) | +33,480円 |
| 10アール当たり収量 | +10%(2,400→2,640kg) | +20,937円 |
| 出荷率 | +5ポイント(90→95%) | +11,632円 |
| 荷造運賃手数料 | +10%(25.65→28.22円/kg) | −9,233円 |
| 農地の賃借料 | +50%(9,916→14,874円/10a) | −8,263円 |
| 雇用の時間単価 | +10%(1,195→1,315円/時) | −3,310円 |
いちばん上と、その次が突出しています。卸売価格を10%動かして得られる33,480円に対し、収量を全国並みにすると211,112円。6.3倍の開きがあります。

採点 32点/100
| 評価軸 | 点 | 満点 |
|---|---|---|
| 利益性 | 1 | 20 |
| 初期投資 | 7 | 15 |
| 回収速度 | 1 | 15 |
| 再現性 | 5 | 15 |
| 営業難易度 | 6 | 10 |
| 運営難易度 | 5 | 10 |
| 将来性・AI耐性 | 5 | 10 |
| 法規・事故リスク | 2 | 5 |
| 総合 | 32 | 100 |
毎月の費用の内訳

投資の回収

こういう人なら向いている/やめたほうがいい
先に、満たさないと土俵に立てない条件
向き不向きの前に、条件があります。ここは人柄の話ではありません。満たすか満たさないかだけの話で、満たしていても商売がうまくいくわけではありません。
| 条件 | この試算での数字 |
|---|---|
| 所要資金750万円を用意できる(自己資金でも借入でもよい) | 初期投資4,751,881円+運転資金2,702,957円=7,454,838円。青年等就農資金は法定無利子、貸付限度額3,700万円、償還17年以内、融資対象物件以外の担保と第三者保証人は不要 |
| 就農時に49歳以下で、前年の世帯所得が600万円以下 | 経営開始資金の要件。年165万円を最長3年 |
| 借りられる畑のあてがあり、地域計画に位置づけられる見込みがある | 横手市で令和7年中に賃貸借が結ばれた筆数は畑210、田6,411。畑は田の3.3% |
| 農作業に年間150日以上、重い物を扱いながら従事できる | 横手市農業委員会は農作業常時従事要件を原則年間150日以上と示している。年間の労働時間1,633時間は5月から10月に寄る |
4つとも、金と年齢と土地と体で決まります。ここから先が、向き不向きの話です。
向いている人
年に1回しか試せないことに耐えられる人。
売る機会は8月から10月の3か月に1度きりです。10年やって10回。しかも損益がゼロになる10アール当たり収量は4,047キログラムで、秋田県の実績2,400キログラムの1.69倍あります。この差を埋めるまでに、試して直して確かめる回数が年に1回しか回りません。植え付けがそろわなかった年も、玉が小さかった年も、取り返しは翌年です。
測って、記録する人。
この試算でいちばん効くのは収量です。全国の夏秋並みの4,820キログラムまで上げると、月の営業利益が211,112円動きます。卸売価格を10%上げて動くのは33,480円。6.3倍の差です。ところが収量は畑ごとに違い、しかも畑は一枚ではありません。何枚かに分けて借りることになります。どの区画で何キログラム穫れたのか、いつ植えていつ穫ったのか、書き留めていなければ、6.3倍効く側を動かしようがない。腕の問題ではなく、続けられるかどうかの問題です。
努力と結果が一致しない年を、受け入れられる人。
値段は自分で決められません。しかも秋田で穫れる8月から10月は、1年のうちで安い時期です。令和7年でいえば87円、93円、93円。同じ年の1月は232円でした。そのうえ、価格が下がったときに差額を埋める補給金は指定産地の中に限られ、秋田県の野菜指定産地12にキャベツはありません。良い玉ができた年に安い、ということが起こる。そのときに畑を放り出さずにいられるかどうかです。
人に頭を下げて、畑を借りられる人。
金では手に入りません。許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。横手市で令和7年中に賃貸借が結ばれた筆数は、田6,411に対して畑210で、田の3.3%です。しかも地域計画の実現に支障が出る権利取得は許可されません。畑を出す側と、地域の計画を作る側の両方に「この人なら」と思ってもらう必要がある。作物を育てる能力とは別の能力です。
冬の半年に、別の稼ぎか別の仕事を作れる人。
横手の降雪の深さ合計は年で793センチ、うち770センチが12月から3月に集まります。年間の労働時間1,633時間は5月から10月に寄り、冬は空きます。標準ケースの年の赤字1,723,987円は、秋田県の最低賃金1,031円で1,672時間働いた額とほぼ同じです。ただしこの1,672時間を冬の半年(約26週)に収めると、週64時間になります。冬に働けば埋まる、という額ではない。それでも、冬に何をするかを決められる人と決められない人とでは、続く年数が変わります。
3年後の日付を、今のうちに決められる人。
経営開始資金は最長3年です。しかも交付期間が終わったあと、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合等は返還になります。3年もらうと決めた時点で、合計6年が決まる。始める前に「4年目に何を見て、続けるかやめるかを決めるのか」を書いておけるかどうかです。制度が切れてから考える人には向きません。
やめたほうがいい人
頑張った分だけ結果が返ってくる仕事がしたい人。
値段を自分で決められず、下がっても補てんはありません。丁寧に作った年に安い相場が来ることがあります。
数字をつけるのが面倒な人。
いちばん効く変数が、測らないと見えない場所にあります。収量は価格の6.3倍効きますが、記録がなければ、翌年に何を変えればいいのかが分かりません。
早く答え合わせをしたい人。
年に1回です。3年やって3回、10年やって10回。手応えが返ってくるまでの間隔が、極端に長い商売です。
借りるより、自分のものにしたい人。
農地は買っても、許可がなければ権利が動きません。違反は三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金。借りる関係を長く保つことが、この商売の土台になります。
うまくいかないときに、量を増やして取り返そうとする人。
この形では、それが逆に働きます。10アール当たりの営業利益がマイナス86,199円なので、200アールを819アールにすると赤字は年7,058,865円まで増え、経営者時給はマイナス1,598円のまま動きません。増やして薄く積むという考え方の癖がある人ほど、深く沈みます。
制度からの入金を、収入として数える人。
経営開始資金の年165万円は3年で切れ、返還の条件が付いています。これを毎年の収入だと思って計画を立てると、4年目に計画ごと崩れます。
どこに活路があるか
どれも試していません。手は2種類あります。ひとつはこの試算の中の数字を動かす手で、これは金額が出ます。もうひとつはこの試算の外に出る手で、こちらは金額が出せません。公開情報に実額がないからです。外に出る手について書けるのは、「成立させるなら何がいくつ要るか」という逆算と、制度で確かめられた線までです。
この試算の中で動かす
1. 収量を上げる。ここだけが効く
卸売価格を1キログラム93円に置いたまま、10アール当たり収量を2,400キログラムから4,047キログラムにできれば、営業利益がゼロになる計算です。全国の夏秋キャベツの10アール当たり収量は4,820キログラム(令和6年産)。そこまで届けば、年間の営業利益は809,353円、経営者時給は750円になる計算になります。標準ケースからの差は年2,533,340円で、感度分析ではこれが最大でした。ただし750円は、秋田県の最低賃金1,031円にまだ届きません。時給1,031円に届くには5,110キログラム。全国の夏秋の106%にあたります。
2. 経営開始資金を使う。標準ケースがほぼ損益ゼロまで来る
年165万円が入ると、標準ケースの月の営業利益はマイナス143,666円からマイナス6,166円になる計算です。損益ゼロの卸売価格は132.9円から94.7円に下がり、損益ゼロの収量は4,047キログラムから2,471キログラムに下がります。2,471キログラムは、秋田県の実績2,400キログラムのすぐ上。ただし最長3年で、合計495万円。この試算の初期投資4,751,881円とほぼ同額なので、機械代を賄って終わる規模だと見ておくことになります。しかも交付期間が終わったあと、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合等は返還となります。3年もらったら、さらに3年は続けることになる。
3. 出荷率を上げる。90%を95%にすると年139,578円
秋田県の令和3年産の夏秋キャベツは、収穫量5,640トンに対して出荷量3,060トンで54.3%。県全体では、穫ったものの半分近くが市場に出ていません。全国の夏秋は90.9%です。
4. 荷造運賃手数料を下げる。10%で年110,795円
1キログラム当たり25.65円で、年1,107,946円。標準ケースの売上4,017,600円の27.6%を占めます。価格交渉ではなく、出荷先と規格と包装の選び方で動く費用です。
この中では、数字は動くが取らない手
- 面積を広げる。10アール当たりの営業利益がマイナス86,199円なので、200アールを300アールにすると営業利益は年861,993円減る計算になります。経営者時給はマイナス1,598円のまま1円も動きません。ただしこの試算は費用をすべて面積か出荷量に比例させており、機械が面積に比例して増えない分の効果は織り込んでいません。
- 価格が上がるのを待つ。損益ゼロの132.9円は、直近4年の8月から10月でいちばん高かった令和6年10月の130円を上回ります。1キログラム232円がついた令和7年1月に出せれば足りますが、横手の12月から3月の降雪の深さ合計は770センチ。露地では収穫できません。
この試算の外に出る
ここから先は、売り先や商品の形や時間の使い方を変える話です。この試算は共販に出す前提で組んであるので、外に出た時点で費用の作りが変わります。金額を出せないぶん、逆算で書きます。
5. 出荷しなかった分に、売り先を作る
この試算は出荷率を90%と置きました。20 × 2,400キログラムで収穫量は48,000キログラム、うち出荷は43,200キログラム。差の4,800キログラムは、畑にはあるのに数えていない分です。しかも種苗も肥料も農薬も地代も、この4,800キログラムの分まで払い終わっています。原価はもう出ている。売り先さえあれば、追加でかかるのは運ぶ費用と包む費用だけです。
どれくらいの意味があるか。4,800キログラムが卸売価格の93円で全部売れたとして446,400円。標準ケースの年の赤字1,723,987円の25.9%です。赤字を全部消すには、費用を引いたあとの手取りが1キログラム当たり359円要る計算になります。93円の3.9倍。これ単独では埋まりません。
量の感覚も出しておきます。4,800キログラムを収穫期の8月から10月(約13週)で売り切るなら、週369キログラム。1玉の重さについて公開されている数字を見つけられなかったので玉数には直せませんが、仮に1玉1キログラムとすれば週369玉です。
弱点も書いておきます。この試算は出荷率90%とだけ置いていて、残り10%の中身を分けていません。小さすぎるのか、割れているのか、虫が入っているのかで、売れるものと売れないものが混じります。それから、秋田県の令和3年産の夏秋キャベツの実績出荷率は54.3%です。この試算の90%が高すぎるなら、数えていない量はもっと多いことになります。ここは、悪い方に外れる可能性と、拾える量が増える可能性の両方を持っています。
6. 直販に切り替える。何がいくつ要るかは逆算できる
卸に出す代わりに、産地直送や通信販売、直売所、マルシェ、SNSでの個別の販売に回す道です。値段を自分で決められる、というのがこの商売の弱点をまっすぐ突いています。
いくら残ればいいのかは逆算できます。年間の経営費5,741,587円のうち、荷造運賃手数料1,107,946円は共販に出すための費用です。直販ならこれが、送料と箱代と決済の手数料と出店料に置き換わります。残りは4,633,641円で、出荷量43,200キログラムで割ると1キログラム当たり107.3円。つまり、送料も資材も手数料も全部引いたあとに1キログラム107.3円が手元に残れば、損益はゼロになる計算です。標準ケースの卸売価格93円との差は14.3円しかありません。
一見、届きそうに見えます。効いてくるのは送料です。送料と資材と手数料の合計が1キログラム当たりいくらになるかが、そのまま必要な売価に乗ります。合計が50円なら売価は157.3円、100円なら207.3円。207.3円は卸売価格93円の2.2倍です。実際の送料と手数料は確認していないので、どちら側になるかは分かりません。
もうひとつの壁は量です。43,200キログラムを全部直販するなら、収穫期の13週で週3,323キログラム。仮に1玉1キログラムとすれば週3,300玉です。箱に詰めて宛名を作って出す作業を、経営者1人が収穫の合間にやる量ではありません。この試算の経営者の労働時間1,079時間は、共販に出す前提で置いたものです。
だから直販は、全部を置き換える手ではなく、一部に効く手だと見ておくことになります。5で見た4,800キログラム(週369キログラム、仮に1玉1キログラムなら週369玉)なら、量としては現実味があります。マルシェや直売所は送料がかからない代わりに、運ぶ時間と立っている時間が要ります。SNSでの販売は金がかからない代わりに、買う人が集まるまでに時間がかかります。この試算の販売促進費はゼロなので、どちらも金の面ではこの試算を崩しません。崩すのは時間の側です。
7. 加工する。どこから許可が要るかの線は、はっきりしている
キャベツを刻んだり漬けたりして売る道です。ここは金額より先に、法律の線を確かめておくことになります。線は確かめられました。
まず、農業には特別扱いがあります。食品衛生法は「営業」を定義したうえで、農業における食品の採取業はこれを含まない、としています(第4条第7項)。営業でなければ、許可も届出も要りません。
どこまでが採取業なのかは、厚生労働省が個別の例を並べて示しています。自分で作ったものを未加工で直売すること(庭先、直売所、通信販売など)は採取業。皮を剥く、根を切る、へたを取る、洗う、袋に詰める、冷やす、凍らせるといった「形状変化を伴わない出荷調整」も採取業。4分割や8分割にしてラップで包むところまでも、簡易な加工として採取業に入ります。
外に出るのはここからです。「消費の利便性のために行う調理や切断」、具体例として茹で野菜、カット野菜、千切りが挙げられていますが、これは採取業ではありません。漬物の製造も採取業ではありません。
採取業から外れると営業になります。営業のうち、政令が並べた32業種は都道府県知事の許可が要り(食品衛生法第55条第1項、同法施行令第35条)、それ以外は届出になります(同法第57条第1項)。キャベツで関係しそうなところを当てはめると、こうなります。
| やること | 要るもの |
|---|---|
| 丸のまま売る/半分や4分の1に切ってラップで包む | 許可も届出も要らない(採取業) |
| 千切りにする、茹でる | 営業届出(許可の要る32業種には当たらない) |
| 漬ける(キムチ、ザワークラウト、浅漬けなど) | 漬物製造業の許可(施行令第35条第29号) |
| 煮る、焼く、揚げる、蒸す、和える(ロールキャベツなど) | そうざい製造業の許可(同第25号) |
| 常温で置ける瓶詰・缶詰・レトルトにする | 密封包装食品製造業の許可(同第30号) |
線は「形が変わるかどうか」ではありません。半分に切ってラップで包むのは形が変わっていますが、採取業のままです。分かれ目は、食べやすくするための調理や切断かどうかと、漬けるかどうかにあります。
ここから先の数字は出せません。許可の手数料も、施設の基準を満たす工事にいくらかかるかも確認していません。ひとつだけ言えるのは、この試算の初期投資4,751,881円は畑で使う機械と設備だけで、加工の施設は入っていないということです。漬物やそうざいに進むなら初期投資の額が変わり、この試算は別のものになります。刻んで袋に詰めるだけなら届出で済みますが、設備をどこまで求められるかは保健所の判断です。個別の当てはめは自治体が判断するので、始める前に確かめることになります。
8. 冬の半年をどう使うかを、先に決める
これは売上を増やす手ではありません。それでも書いておきます。
年間の労働時間1,633時間は5月から10月に寄り、12月から3月は降雪770センチで畑に出られません。冬が空く。そこで、標準ケースの年の赤字1,723,987円を、秋田県の最低賃金1,031円で割ってみます。1,672時間。これを冬の半年(約26週)に収めると週64時間になり、現実の働き方にはなりません。1週間40時間という法定の上限どおりに26週働いたなら1,040時間、1,072,240円で、赤字の62.2%までです。
つまり、冬に働けば赤字が消えるという話ではありません。それでも、経営開始資金の年165万円が同じ時給の1,600時間分にあたることと並べると、位置づけがはっきりします。3年で切れる制度の入金の代わりを、自分の時間で作れるかという話です。この手を打っても、この商売の営業利益も採点も1円も動きません。動くのは、続けられる年数のほうです。
9. 誰に売るかを変える。ただし順番がある
加工や業務用の実需者と契約して作る道です。令和6年産の全国のキャベツ出荷量1,177,000トンのうち、加工向が162,700トンで13.8%、業務用向が66,400トンで5.6%。北海道は出荷量49,400トンのうち加工向が24,200トンで49.0%を占めます。市場としては小さくありません。
契約なら値段を先に決められます。値段を自分で決められないというこの商売の弱点が、そこだけ消える。
ただし順番があります。値段を固定しても、収量が2,400キログラムのままなら、出荷量1キログラム当たりの経営費は132.9円のままです。契約の価格がこれを超えなければ、赤字のほうが固定されます。契約栽培は収量が上がったあとに効く手であって、上がる前に打つと順番が逆になる。
そしてロットと納期と規格を約束することになります。天候で穴を空ければ、相手は代わりを買って埋めます。200アール1人の規模で相手にしてもらえるかどうかは、確認できていません。
外に出ても、取らない手
- 全量を直販に置き換える。週3,323キログラムを1人で発送する体制が要ります。人を入れれば費用が増え、この試算とは別の商売になります。
- 加工の施設を建てて、漬物やそうざいに進む。初期投資が変わるので、この試算は作り直しになります。刻んで届出で済む範囲をまず試し、量が読めてから施設の話に進む順番なら、こわれ方が小さくて済みます。
- 高い時期に出す。1キログラム232円がついたのは令和7年の1月です。横手の12月から3月の降雪の深さ合計は770センチで、露地では穫れません。貯蔵して冬に出す道は、貯蔵の設備の費用も目減りの割合も確かめていないので、この試算では扱えません。
この商売をどう見るか
これは作物を売る商売というより、面積に費用を先払いして、収量で回収する商売です。
費用の大半は、穫れても穫れなくても面積の分だけ出ていきます。種苗も肥料も農薬も地代も機械の償却も、10アールごとにかかる。そこに掛け算で乗るのが収量で、さらに掛け算で乗るのが価格です。順番が大事で、価格は最後に乗ります。
だから、価格の振れの大きさは事実として認めたうえで、話の順番から外すことになります。1年のうちに1キログラム76円から232円まで動く商品です。ところがこの試算では、価格を弱気77円から強気109円まで振っても、3つとも赤字になりました。出荷量1キログラム当たりの経営費が132.9円あるからです。相場が動く前に、原価が勝ってしまっている。
すると立てるべき問いも変わります。「キャベツは儲かるか」ではありません。「自分は10アールで何キログラム穫れるか」です。産地の実力を測る数字と、自分の損益分岐点が、同じ単位で並ぶ。秋田県の令和3年産の夏秋は2,400キログラム、この試算の損益ゼロは4,047キログラム、全国の夏秋は4,820キログラム。この3つの数字の間のどこに自分が立つのかが、答えのほぼ全部になります。
この商売の天井は、全国の夏秋と同じだけ穫っても経営者の時給が750円で、秋田県の最低賃金1,031円に届くには全国を6%上回る5,110キログラムが要るところにあります。
天井が低いこと自体より、その先の性質が重い。この形は、規模を増やしても天井が上がらないように出来ています。10アール当たりの営業利益がマイナスである限り、面積を足せば赤字が増え、経営者時給はマイナス1,598円のまま1円も動かない計算になります。うまくいかないときに、普通の商売なら取れる「量を増やして薄い利益を積む」という手が、ここでは逆に働く。ただしこれは試算の作り方にも寄っていて、費用をすべて面積か出荷量に比例させたので、機械が面積ほどには増えない分の効果は入っていません。実際にはもう少し緩むはずですが、どこまで緩むかは確かめられませんでした。
形を変える手はあります。出荷しなかった分に売り先を作る、直販に回す、刻んだり漬けたりする、冬の時間を別の稼ぎに充てる、契約して値段を先に決める。ただしどれも、この試算の外に出る手です。外に出た時点で費用の作りが変わるので、ここで出した数字はそのまま使えなくなります。金額が出せないから弱い手だ、という意味ではありません。金額を出すには別の試算が要る、という意味です。
制度の位置づけも、この並びのなかで決まります。経営開始資金の年165万円は、3年で495万円。この試算の初期投資4,751,881円とほぼ同じ額です。機械代を国が肩代わりしてくれる制度だと見れば筋が通る。毎年の赤字を埋め続ける制度ではありません。3年たつと、手元には機械と、その年の収量だけが残ります。
限界も書いておきます。作付面積200アール、機械の金額4,751,881円、運転資金2,702,957円。この3つに直接の出典がありません。そして秋田県の10アール当たり収量2,400キログラムは県全体の平均で、自給的な作付も含んでいます。専業でやったときにどこまで上がるのかを、公開情報から確かめることはできませんでした。この試算でいちばん結論を左右する数字が、いちばん確かめられていない場所にある。そこは正直に置いたままにします。

始めるなら、何から
やると決めた人が、最初に何を、どの順番でやるのか。始めることを勧めているわけではありません。特定の業者やスクール、代行サービスは挙げません。金額と日数は、法令と官公庁と自治体が公開しているもので確かめられた分だけを書きます。確かめられなかったものは、空けたまま残します。
1. 手続き
農地法第3条の許可
農地について所有権を移転し、又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する場合には、当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません(農地法第3条第1項)。許可を受けないでした行為は、その効力を生じません(同条第6項)。違反した者は三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金です(同法第64条第1号)。
| 申請先 | 横手市農業委員会事務局および各地域課産業建設係(横手市条里二丁目1番15号 サンサン横手、電話0182-35-2172) |
| 標準処理期間 | 4週間 |
| 受付期間 | 毎月18日から25日頃(締切日は毎月25日頃。曜日配列などにより前後する) |
| 手数料 | 横手市のページで確認できませんでした |
| 許可の基準 | 全部効率利用要件/農地所有適格法人以外の法人要件/農作業常時従事要件(原則年間150日以上)/地域調和要件 |
| 追加された基準 | 令和7年3月に地域計画を策定したことに伴い、その計画の達成に支障が生ずるおそれがあると認められる場合は許可することができない |
| 添付書類 | 2025年11月11日から、土地の全部事項証明書の添付は不要 |
かつてあった下限面積要件は廃止されています。農林水産省 経営局は「農地を利用しやすくするため、農地等の権利取得時の下限面積要件を廃止」と示しています。
農地中間管理機構を通す場合
農地中間管理機構(秋田県農業公社)を通すときは、農地法ではなく農地中間管理事業の推進に関する法律の規定により権利が動きます。市に申請書を提出し、農用地利用集積等促進計画を作成します。相談窓口は、賃借権の設定については農業振興課または各地域課産業建設係です。横手市は、令和7年4月以降は相対での利用権設定はできなくなった、としています。
認定新規就農者
青年等就農計画認定申請書を作成し、市町村に申請します。市町村が審査・認定し、認定後に通知されます。対象は原則18歳以上45歳未満の青年、特定の知識・技能を有する65歳未満の中高年齢者などです。
制度からの入金
| 制度 | 金額 | 期間 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 経営開始資金 | 月13.75万円(年165万円) | 最長3年 | 独立・自営就農する認定新規就農者/経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画/目標地図に位置付けられ若しくは位置付けられることが確実と見込まれること、又は農地中間管理機構から農地を借り受けていること/原則、前年の世帯所得600万円以下 |
| 就農準備資金 | 月13.75万円(年165万円) | 最長2年 | 都道府県等が認めた研修機関等で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上の研修/常勤の雇用契約を締結していないこと/傷害保険に加入すること |
| 経営発展支援事業 | 国費上限500万円(経営開始資金の交付対象者は上限250万円) | ― | 49歳以下の認定新規就農者/本人負担分について金融機関から融資を受けていること/補助率は都道府県支援分の2倍を国が支援(国の補助上限2分の1) |
| 青年等就農資金 | 貸付限度額3,700万円(特認限度額1億円) | 償還17年以内(据置5年以内) | 認定新規就農者/法定無利子/融資対象物件以外の担保及び第三者保証人は不要/農地等の取得は資金使途から除く |
経営開始資金は、交付期間終了後、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合等は返還となります。就農準備資金は、研修終了後1年以内に49歳以下で就農しなかった場合や、就農後、交付期間の1.5倍(最低2年間)の期間、農業を継続しない場合は返還となります。
税務署
個人事業の開業・廃業等届出書を、納税地を所轄する税務署長に提出します。青色申告にするなら、所得税の青色申告承認申請書も出します。
2. 場所・道具の確保
まず畑を探します。ここがいちばん難しいところです。
| 秋田県の耕地面積(令和3年) | 146,400ヘクタール(田128,400/畑17,900。畑は12.2%) |
| 横手市の耕地面積(令和3年) | 17,600ヘクタール(田15,500/畑2,060。畑は11.7%だが面積では県内最大) |
| 横手市の畑の賃借料(令和7年) | 10アール当たり平均9,916円(集計筆数210) |
| 横手市の田の賃借料(令和7年) | 10アール当たり平均11,871円(集計筆数6,411) |
| 横手地域の畑 | 10アール当たり平均9,481円(集計筆数27) |
畑の賃借料には果樹畑も含まれ、果樹畑の賃借料は品種・樹齢等により増減すると横手市は注記しています。この試算では200アール分として年198,320円を置きました。
気候の条件ははっきりしています。横手の降雪の深さ合計の年平年値は793センチで、12月186センチ、1月276センチ、2月202センチ、3月106センチ。12月から3月に770センチが集まります。最深積雪の平年値は119センチ。5月から10月は降雪ゼロで、この期間だけが露地の作期です。8月の平均気温は24.7℃、日最高気温の平年値は30.0℃。
機械については、この試算で4,751,881円と置きました。統計の10アール当たり減価償却費33,942円に200アール分を掛け、農業用設備の法定耐用年数7年で割り戻した推定です。実際の価格は確認していません。
3. 仕入れ・供給の確保
最初に押さえるのは畑であって、種でも機械でもありません。
許可が下りるかどうかは、地域計画の目標地図との関係で決まる部分があります。借りたい農地が地域計画の中でどう位置づけられているかを、市の農業振興課に先に確かめることになります。経営開始資金も経営発展支援事業も、「目標地図に位置付けられ若しくは位置付けられることが確実と見込まれること、又は農地中間管理機構から農地を借り受けていること」を要件にしています。畑の決め方が、そのまま制度を使えるかどうかを決めます。
資材の金額は、統計の10アール当たりで種苗費16,866円、肥料費27,966円、農薬衛生費41,999円、諸材料費11,332円。200アールなら順に337,317円、559,318円、839,973円、226,649円になります。いずれも露地キャベツ作単一経営の全国平均で、秋田県の実額ではありません。
4. 売る場所・受注の窓口の準備
出荷先は先に決めることになります。値段を決めるのは自分ではないからです。
| 出荷先 | 押さえる数字 |
|---|---|
| JAの共販 | 横手市の関係農協はJA秋田ふるさと。荷造運賃手数料はこの試算で1キログラム25.65円、年1,107,946円(売上の27.6%) |
| 卸売市場へ個人で出荷 | 運賃は自分で持つ。秋田から大消費地までの運賃は確認できていません |
| 加工・業務用の契約栽培 | 令和6年産の全国のキャベツ出荷量1,177,000トンのうち、生食向947,900トン、加工向162,700トン、業務用向66,400トン。北海道は49,400トンのうち加工向24,200トン(49.0%) |
| 直売所・産地直送 | 43,200キログラムをさばける規模ではない |
価格が下がったときの補てんについては、先に調べておくことになります。指定野菜価格安定対策事業の補給金の対象は、指定産地の区域内で生産される指定野菜に限られます。秋田県の野菜指定産地は12で、夏秋きゅうり4、夏秋トマト4、秋冬ねぎ3、ほうれんそう1(令和8年5月8日現在)。キャベツはありません。
特定野菜等供給産地育成価格差補給事業は、都道府県知事が選定した対象産地で生産された指定野菜も対象になります。秋田県でキャベツが選定されているかは確認できませんでした。県の野菜価格安定法人にお尋ねください。
5. 最初の1件までの順番
- 借りられる畑を探す。地域計画の目標地図にどう位置づけられているかを、市の農業振興課に確かめる
- 研修を受けるなら、就農準備資金の要件(概ね1年以上、概ね年間1,200時間以上)から逆算して始める
- 青年等就農計画を作り、市町村の認定を受ける。ここで認定新規就農者になる
- 農地法第3条の許可を申請する。受付は毎月18日から25日頃、標準処理期間は4週間。または農地中間管理機構を通す
- 許可が下りてから(機構経由なら促進計画の公告があってから)、その畑を使い始める
- 経営開始資金を市町村に申請する。年165万円、最長3年
- 経営発展支援事業を使うなら、本人負担分について金融機関の融資を先に手当てする
- 機械を入れる。青年等就農資金を使うなら日本政策金融公庫へ。無利子、限度額3,700万円、償還17年以内
- 5月から6月に定植し、8月から10月に収穫して出荷する
- 開業届を税務署へ出す。青色申告にするなら承認申請書も出す
順番を間違えると違法になる。 許可を受けないでした行為は、その効力を生じません(農地法第3条第6項)。違反した者は三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金です(同法第64条第1号)。許可の前に耕し始めることはできません。
順番を間違えると制度が使えなくなる。 経営開始資金も経営発展支援事業も、目標地図に位置付けられること、又は農地中間管理機構から農地を借り受けていることを要件にしています。畑を決めてから制度を調べると、間に合わないことがあります。また、経営開始資金を受けると経営発展支援事業の国費上限が500万円から250万円に下がります。どちらを取るかは、機械を入れる前に決めることになります。
日程の制約。 農地法第3条の許可の申請受付は毎月18日から25日頃で、標準処理期間は4週間。締切を1回逃すと、次の総会まで1か月ずれます。定植は5月から6月なので、逆算して動くことになります。
日数と費用の合計。 公式の金額として確かめられたのは、横手市の畑の賃借料の平均9,916円(10アール当たり、令和7年に契約締結された賃貸借の集計)だけです。200アールで年198,320円。農地法第3条の許可の申請手数料は確認できませんでした。機械・設備の4,751,881円は統計から割り戻した推定で、運転資金2,702,957円も推定。所要資金は7,454,838円です。日数は、農地法第3条の許可の標準処理期間が4週間、申請の受付が毎月18日から25日頃であることが確かめられました。
この試算が外れるとしたら
- 収量。 秋田県の10アール当たり収量2,400キログラムは県全体の平均で、自給的な作付も含んでいます。同じ年の夏秋は収穫量5,640トンに対して出荷量3,060トン(54.3%)で、販売目的でない作付がかなり含まれているとみられます。専業ならもっと穫れる可能性がありますが、確かめられませんでした。この試算でいちばん結論を左右する数字です。
- 初期投資。 4,751,881円に直接の出典がありません。統計の減価償却費から法定耐用年数7年で割り戻した推定です。もとの統計の経営体は露地野菜の作付延べ面積が903.6アールあり、200アールより機械を広く使い回せている可能性が高い。実際にはもっとかかる方向に外れると考えられます。
- 作付面積。 200アールという設定に出典はありません。労働時間の原単位(10アール当たり81.7時間)から置いたものです。秋田県の収量が低いなら収穫の時間は短くなるはずで、同じ労働時間でより広く持てる可能性があります。
- 経営費の単価。 種苗から減価償却まで、10アール当たりの単価はすべて全国平均です。秋田県の実額ではありません。
- 運賃。 1キログラム25.65円は、統計の10アール当たりの額を全国の10アール当たり出荷量で割ったもの。秋田は大消費地から遠く、高くなる可能性がありますが、織り込んでいません。
- 出荷率90%。 全国の夏秋の90.9%に寄せた値です。秋田県の実績54.3%とは大きく離れています。そして残り10%の中身(小玉・裂球・虫害などの内訳)を分けていないので、そこから何キログラムが売り物になるかは分かりません。
- 卸売価格の幅。 令和4年から令和7年の4年しか取っていません。長期でみると全国の年平均は令和3年の74円から令和6年の119円まで動いています。この幅の外に出る年があります。
- 雇用の時間単価1,195円。 統計の雇人費と労働時間から割り出した推定で、法定福利費などを含むかどうかは分かりません。秋田県の最低賃金は1,031円。収穫期に人が集まる時給かどうかも確認していません。
- 運転資金。 経営費の7か月分としましたが、何か月分の立替が要るかを根拠づけていません。出荷代金の入金時期も確認していません。
- この試算に入っていないもの。 借入の元本返済、国民健康保険料、国民年金、所得税、消費税。
- この試算の外に出る手の金額。 直販の送料・資材費・決済手数料、産地直送のサービスの手数料、マルシェの出店料、直売所の手数料、加工の許可の手数料と施設にかかる工事費。どれも確認していません。だから金額ではなく、いくら残れば成立するかという逆算だけを書きました。
- 1玉の重さ。 公開されている数字を見つけられませんでした。玉数への換算は、仮に1玉1キログラムとした場合の目安です。
- 情報環境の偏り。 新規就農を勧める立場の発信には収支の数字が多数ありますが、原典をたどれるものがほとんど見つかりませんでした。等級Dとして、数値根拠に一切使っていません。逆に、法令・官公庁・自治体・独立行政法人の公表で埋まったのは制度と相場と気候で、埋まらなかったのはこの経営に固有の数字です。
前提と出典
選ばなかった形
農地を買う形、施設(ハウス)で作る形、冬どりや春どりを組み合わせる形、キャベツ以外を組み合わせた複合経営、水稲との複合、法人化する形、実需者との契約栽培だけで回す形、産地直送や通信販売を主な販路にする形、加工品にして売る形、家族の無給労働を前提にする形、農作業受託を兼ねる形。いずれも費用と売上の構造が変わります。
推定した箇所
作付面積200アール、10アール当たり収量2,400キログラム、出荷率90%、経営費の10アール当たり単価(種苗・肥料・農薬・諸材料・動力光熱・修繕・農具・衣料・土地改良・租税公課・利子割引・雑支出・減価償却)、荷造運賃手数料1キログラム当たり25.65円、雇人費と労働時間の配分、初期投資4,751,881円、運転資金2,702,957円、卸売価格の3ケース、制度からの入金を経営開始資金のみとしたこと、作型を夏秋どり1作としたこと。
このうち収量と経営費の単価は公的統計の実数をそのまま当てたもので、値そのものには出典があります。出典がないのは、作付面積200アールという設定と、初期投資4,751,881円と運転資金2,702,957円です。玉数の換算に使った「1玉1キログラム」は、出典のない仮の置き方です。
まだ分からないこと
秋田県で露地キャベツを販売目的で作ったときの10アール当たり収量。秋田県の露地キャベツの出荷率と、出荷しない分の内訳。2ヘクタール規模で必要な機械・設備の実際の価格。秋田県から大消費地までの運賃と市場の販売手数料の内訳。農地法第3条の許可の申請手数料。秋田県でキャベツが特定野菜等供給産地育成価格差補給事業の対象産地に選定されているか。横手市で露地野菜に使える畑を実際に借りられるか。農地中間管理機構を通したときの手続きにかかる期間。200アール規模で加工・業務用の契約栽培が成立するか。収穫期に臨時雇用が集まる時給。出荷代金が入金されるまでの期間。秋田県および横手市の独自の新規就農支援。秋田県の露地キャベツの栽培暦。経営開始資金の交付が終わったあとの離農率。キャベツ1玉の平均的な重さ。直販にかかる送料・資材費・決済手数料の実額。産地直送のサービスやマルシェや直売所の手数料と出店料。漬物製造業やそうざい製造業の許可の手数料と、施設の基準を満たすための工事費。冬季に秋田県内で就ける仕事の有無と時給。
出典
| 等級 | 出典 |
|---|---|
| A | e-Gov法令検索「農地法」 |
| A | 農林水産省 経営局「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律について」(令和5年8月) |
| A | 横手市「農地の売買・貸借は農業委員会の許可が必要です」 |
| A | 横手市「農地中間管理事業の推進に関する法律に規定する農地の権利移動」 |
| A | 横手市「農地の賃借料情報を提供します(令和7年受付分)」 |
| A | 農林水産省「令和6年産野菜生産出荷統計 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量(キャベツ)」 |
| A | 農林水産省「令和3年産野菜生産出荷統計 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量(キャベツ)」 |
| A | 農林水産省「令和6年産都道府県別の用途別出荷量(キャベツ)」 |
| A | 農林水産省「青果物卸売市場調査結果(令和7年年間計及び月別)」 |
| A | 農林水産省「令和6年青果物卸売市場調査報告 中央卸売市場の野菜の月別卸売数量・価額・価格」 |
| A | 農林水産省「令和5年青果物卸売市場調査報告 中央卸売市場の野菜の月別卸売数量・価額・価格」 |
| A | 農林水産省「令和4年青果物卸売市場調査報告 中央卸売市場の野菜の月別卸売数量・価額・価格」 |
| A | 農林水産省「青果物卸売市場調査報告 都市類別にみた野菜の卸売数量・価額・価格累年統計 キャベツ」 |
| A | 農林水産省「営農類型別経営統計 個人経営体の品目別単一経営収支(露地キャベツ作単一)」 |
| A | 農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」 |
| A | 農林水産省「新規就農者育成総合対策」(令和8年度予算) |
| A | 農林水産省「青年等就農資金」(令和8年度予算) |
| A | 農林水産省「認定新規就農者制度について」 |
| A | 東北農政局「秋田県の野菜指定産地一覧(令和8年5月8日現在)」 |
| A | 農畜産業振興機構「指定野菜価格安定対策事業の概要」 |
| A | 農畜産業振興機構「野菜価格安定制度の概要」 |
| A | 気象庁「横手(秋田県)平年値(年・月ごとの値)主な要素」 |
| A | 農林水産省「令和3年 農林水産関係市町村別統計 耕地面積 秋田県」 |
| A | e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」 |
| A | 秋田県「園芸メガ団地等の全県展開に向けた取組」 |
| A | 秋田県「【令和8年3月31日】秋田県の最低賃金が改定されました!」 |
| A | 農林水産省「令和6年産野菜指定産地の作付面積、収穫量及び出荷量」 |
| A | e-Gov法令検索「食品衛生法」 |
| A | e-Gov法令検索「食品衛生法施行令」 |
| A | 厚生労働省「農業及び水産業における食品の採取業の範囲について」別添「食品の採取業に関するQ&A」 |
| A | e-Gov法令検索「労働基準法」 |
すべて実URLを開いて原典を確認しました(27件は2026-08-05、加工の線と冬の時間の換算に使った4件は2026-08-07)。A級31件、B級0件、C級・D級は数値根拠に使っていません。利害関係のある出典は1件(秋田県の園芸振興施策。県が自らの施策を説明する立場であり、施策の存在の事実としてのみ引用しました)。採取業のQ&Aは2026-08-07に厚生労働省のサイトから取得できた版で、これより新しい改正があるかどうかは確認していません。採取業に当たるかどうかの個別の当てはめは、自治体が判断します。

許認可・規約
農地を手に入れるには許可が要る
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない(農地法第3条第1項)。第1項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない(同条第6項)。第3条第1項の規定に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金(同法第64条第1号)。買う場合も借りる場合も、この許可が要る。金があっても、許可がなければ権利は動かない。
許可されない場合
農業委員会は、次の場合には許可をすることができない(農地法第3条第2項の各号。主なもの)。一 権利を取得しようとする者又はその世帯員等が、機械の所有の状況、農作業に従事する者の数及び配置の状況、法令の遵守の状況等からみて、取得後において耕作の事業に供すべき農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うと認められない場合(全部効率利用要件)。二 農地所有適格法人以外の法人が権利を取得しようとする場合。四 権利を取得しようとする者又はその世帯員等が、取得後において行う耕作の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合(農作業常時従事要件)。六 取得後に行う事業の内容並びに農地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合(地域調和要件)。横手市農業委員会は、農作業常時従事要件について「原則年間150日以上」を示している。
下限面積要件は廃止されている
かつては、権利取得後の農地面積が一定に満たないと許可されない下限面積要件があった。農林水産省 経営局は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律について、農地法第3条の許可基準のうち下限面積要件を「廃止」と示している(令和5年8月)。改正の理由として「農地を利用しやすくするため、農地等の権利取得時の下限面積要件を廃止」と記されている。現行の農地法第3条第2項の各号にも、面積の基準はない。
地域計画が新しい関門になっている
農林水産省は、農地法関係事務に係る処理基準(事務次官通知)の一部改正として、「地域計画の実現に支障を生ずるおそれがある権利取得については許可することができない」ことを示している。横手市農業委員会も、令和7年3月に地域計画を策定したことに伴い、その計画の達成に支障が生ずるおそれがあると認められる場合は許可をすることができないものとされた、としている。また、権利取得後に行う耕作の事業の具体的内容を明らかにしない場合には、資産保有目的・投機目的等で農地等を取得しようとしているものと考えられることから、農地等の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うものとは認められない、とされている。
手続きと期間
横手市農業委員会は、農地法第3条許可の標準処理期間を4週間と定めている。申請の受付期間は毎月18日から25日頃で、締切日は毎月25日頃。曜日配列により前後する。窓口は農業委員会事務局および各地域課産業建設係。 2025年11月11日から、申請書への土地の全部事項証明書の添付が不要になった。
農地中間管理機構という別の道
農地中間管理機構(秋田県農業公社)を通す場合は、農地法ではなく農地中間管理事業の推進に関する法律の規定により権利が動く。市に申請書を提出し、農用地利用集積等促進計画を作成する。横手市は、令和7年4月以降は相対での利用権設定はできなくなった、としている。
借りた側は簡単には追い出されない
農地の賃貸借の当事者は、都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない(農地法第18条第1項)。期間の定めがある賃貸借で、期間の満了の1年前から6月前までに更新しない旨の通知がなければ、従前と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなされる(同法第17条)。ただし農地中間管理機構を通じた賃貸借は、この法定更新の対象から除かれている。
認定新規就農者
新たに農業経営を営もうとする青年等が青年等就農計画を作成し、市町村が認定する制度がある。対象は原則18歳以上45歳未満の青年、特定の知識・技能を有する65歳未満の中高年齢者など。認定農業者は含まない。
制度からの入金の要件
経営開始資金は、独立・自営就農時に49歳以下の者に、月13.75万円(年165万円)を最長3年間交付する。交付主体は市町村。主な要件は、独立・自営就農する認定新規就農者であること、経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること、目標地図に位置付けられ若しくは位置付けられることが確実と見込まれること又は農地中間管理機構から農地を借り受けていること、原則、前年の世帯所得が600万円以下であること。交付期間終了後、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合等は返還となる。就農準備資金は、就農予定時に49歳以下の研修生に月13.75万円(年165万円)を最長2年間交付する。都道府県等が認めた研修機関等で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上の研修を受けること、常勤の雇用契約を締結していないことが要件で、研修終了後1年以内に49歳以下で就農しなかった場合や、就農後、交付期間の1.5倍(最低2年間)の期間、農業を継続しない場合は返還となる。経営発展支援事業は、49歳以下の認定新規就農者に対し、機械・施設等の導入を国費上限500万円で支援する。経営開始資金の交付対象者は上限250万円になる。補助率は都道府県支援分の2倍を国が支援するもので、国の補助上限は2分の1 (例として国2分の1、都道府県4分の1、本人4分の1)。本人負担分について金融機関から融資を受けていることが要件に入っている。青年等就農資金は、認定新規就農者に対する法定無利子の貸付で、貸付限度額3,700万円(特認限度額1億円)、償還期限17年以内(据置期間5年以内)、融資対象物件以外の担保及び第三者保証人は不要。貸付主体は株式会社日本政策金融公庫。資金使途は機械、施設等の取得と営農資金で、農地等の取得は除かれる。
価格が下がったときの補てんは、産地でなければ受けられない
指定野菜価格安定対策事業は、販売した野菜の平均販売価額が平均価格の90%(保証基準額)を下回った場合に、保証基準額と平均販売価額との差額を補てんする事業である(独立行政法人農畜産業振興機構)。補給金の交付の対象となる野菜は、指定産地の区域内で生産される指定野菜に限られる。指定産地以外で生産された指定野菜は、登録出荷団体又は登録生産者が出荷する野菜であっても対象にならない、と機構が明記している。秋田県の野菜指定産地は12産地で、その内訳は夏秋きゅうり4、夏秋トマト4、秋冬ねぎ3、ほうれんそう1(令和8年5月8日現在、東北農政局)。キャベツの指定産地はない。なお、特定野菜等供給産地育成価格差補給事業は、都道府県知事が選定した対象産地で生産された指定野菜も対象とする。秋田県でキャベツが選定されているかは確認できなかった。要一次情報。
雇用
秋田県の最低賃金は令和8年3月31日から時間額1,031円に改定されている。
推定で置いた数字の一覧
| 推定で置いた数字 | 前提 |
|---|---|
| 作付面積 200アール(2.0ヘクタール) | |
| 10アール当たり収量 2,400キログラム | |
| 出荷率 90% | |
| 経営費の10アール当たり単価(種苗・肥料・農薬・諸材料・動力光熱・修繕・農具・衣料・土地改良・租税公課・利子割引・雑支出・減価償却) | |
| 荷造運賃手数料 1キログラム当たり25.65円 | |
| 雇人費(出荷量1キログラム当たり9.20円・年397,251円)と労働時間の配分 | |
| 初期投資 4,751,881円 | |
| 運転資金 2,702,957円 | |
| 農地の賃借料 10アール当たり9,916円 | |
| 卸売価格の3ケース(弱気77円/標準93円/強気109円) | |
| 制度からの入金を経営開始資金のみとしたこと | |
| 作型を夏秋どり1作としたこと |
出典の一覧
更新履歴
| 日付 | 種別 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026-08-05 | 初回作成 | 公開情報だけで初版を作成。A級27件の原典を確認。農地法第3条の許可を分析の入口に置き、下限面積要件の廃止と地域計画の追加を確認した。3ケースは卸売価格の振れで組み、青果物卸売市場調査の令和4年から令和7年の8月から10月の実数から加重平均を出した。収量は秋田県の実数、経営費と労働時間は農業経営統計調査の露地キャベツ作単一経営の10アール当たりの値を当て、農地の賃借料は横手市の実額に置き換えた。補助金は制度からの入金として売上と分け、入れた数字と入れない数字の両方を出した |
| 2026-08-07 | 書き方の改定 | 読者向けの構成を10セクションに組み替えた。結論を4段(前提→言い切り→理由→表)にして末尾に判定を置き、危ないところを並べていた節を廃して商売のリスクを各節へ分配し、分析の弱点を「この試算が外れるとしたら」へ移した。「前提と、どこまで確かか」と「出典」を統合。面白いポイントを16項目から3項目(筆頭+2)に絞り、活路を層1(試算の中)と層2(試算の外)に分け、向き不向きを最低限の要件と資質の2段にした。「想定した人と、その一年」と天井の1行を追加。活路の層2のために食品衛生法・同施行令・厚生労働省の採取業Q&A・労働基準法の4件を原典で確認して出典に追加した(A級27件→31件)。「全国の主産地並み」という書き方を「全国の夏秋の平均」に訂正(4,820キログラムは全国の夏秋の平均であって主産地の水準ではない)。数値・結論・3ケース・採点32点は変えていない |
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訂正の受付
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本コンテンツは公開情報と一定の仮定に基づく試算です。特定企業の実際の利益を示すものではなく、地域・規模・経験・時期によって結果は変わります。出典・計算条件・更新日は商売解剖図鑑に掲載します。